On the Road

スピリチュアル妄想録
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理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書 (1948))理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書 (1948))
(2008/06/17)
高橋 昌一郎

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これはめちゃくちゃオモロイっす。識者が選ぶ年末の新書ベストテンに入ってきてもおかしくない本でしょう。

人間の理性の限界がどこにあるかを、ディベート形式で展開していく。
そのディベートが面白くて、色んな属性を持った人が出てくる。大学生、論理哲学者、ロマン主義者、物理学者、科学哲学者、カント主義者、数理経済学者、国際政治学者etc・・それぞれの「専門」を極端にデフォルメした立場からディベートを進めていき、飽きがこない。

中身は大きく分けて、三部。全体としてイロイロな「パラドクス」や「原理」が出てくる。
固有名詞っぽいのを下にあげるが、それぞれをググってみてもイロイロ勉強になる。

第一部は、民主主義の不完全性について。すなわち、いかに完全な投票、合理的な意思決定が存在しないかの説明。
アロウの不可能性定理
コンドルセのパラドクス
ボルダのパラドクス
パウロスの全員当選モデル
ギバード・サタースウェイトの定理
ナッシュ均衡
しっぺ返し戦略
ミニ・マックス戦略


第二部は科学のの限界について。単なるパラダイム論ではなく、量子科学の話もあって面白い。
ラプラスの悪魔
ハイゼンベルクの不確定性原理
EPRパラドックス

第三部は知識の限界。論理学や基礎数論の話が多く、一番難解な箇所で読みにくい。
オコンナーの語用論的パラドクス
スクリブンの卵
ゲーデルの不確実性定理
ペアノの自然数論
抜き打ちテストのパラドクス
チューリング・マシン


興味深いポイントを次に列挙。
<序章>
・百メートル走で人間が9秒の壁を越えることはなく、せいぜい9秒37。マラソンもせいぜい1時間48分。人の運動能力は、循環器系や筋肉の物理的性質によって制限されているから。

・体脂肪率の高い女性は筋肉が男性より少ないためパワー形の競技で勝つことはできないが、志望が有利に働く長距離水泳などは、女性が有利。例えばドーバー海峡横断レースは世界記録保持者が女性で、男性よりも30分以上早い記録。


<第一部:選択の限界>
・ボルダのパラドクスによれば、単記投票方式は必ずしも民主的な投票方式ではない。一番好まれた候補者が一番嫌われている候補者であることもある。

・「単記投票方式」にみならず、「総当り決戦方式」、「順位評点方式」、「上位二者決戦方式」、「複数記名方式」それぞれに問題があり、方式により選ばれる候補者のタイプも変わってくる。

・アロウの不可能性定理によれば、(アロウの定義による)完全に民主的な社会的決定方針は存在しない。

・ギバード・サタースウェイトの定理によれば完全に公平な投票制度も存在しない。

・囚人のジレンマ・ゲームにおいて一番強いのは「しっぺ返し」戦略をとるプログラム。つまり基本的には協調路線をとり、相手が裏切ったときにだけ、こちらも裏切る、また相手が協調路線に戻ればこちらも協調路線に戻るというプログラム。

・ゼロサムゲームにおいては、ミニ・マックス戦略が、最強。


<第二部:科学の限界>←ここがこの本で一番面白い。
・1687年にニュートンが発表した「プリンキピア」あらゆる自然現象を説明した。自身の発見した万有引力の法則、ガリレオの落下運動力学、惑星運動に関するケプラーの法則、振り子に関するホイヘンスの研究を総合した。プリンキピアはユークリッドの原論を意識して書かれ、慣性の法則、運動方程式、作用反作用の法則の基本3法則から物理現象を演繹的に説明。

・ラプラスは、ニュートン力学が全ての自然現象を説明できれば、宇宙の出来事は全て決定されており、不確定要素が入り込む余地はないと考えた。「ラプラスの悪魔」というある瞬間に宇宙の全ての原始の位置と速度をしっている悪魔がいれば、未来永劫の宇宙の姿を予知できるとした。

・ところが、光の速度に関しては、速度合成法則が成り立たないことが実験的に確認され、ニュートン力学でも説明できない現象とされた。アインシュタインは、車と同じ速さで走ったら、車は泊まって見えるが、光は絶対的な速度であり、同じ速さで走っても速度は変わらないと考えた。

・1905年、アインシュタインは「特殊相対性理論」を発表、その後15年に、重力や加速度運動にも特殊理論を応用し「一般相対性理論」を完成。ニュートン力学が間違っていたというよりも、アインシュタインの物理学がより広範に適用できたということ。地球上の一般的な物理法則には、アインの物理はニュートンとほとんど同じ結果を導く。ただし、運動する物体の速度が光の速度に近づいていたり、強い重力場が問題になる場合はニュートン力学は適用不可能となる。

・ニュートンは時間と空間を絶対的なものとみなしたが、アインシュタインは、時間も空間も観測者によってことなる相対的なものとみなした。

・ハイゼンベルクの不確定性原理;ミクロの世界を観測する際、対象が小さすぎるため、測定のために用いる光や、電磁波そのものが対象を乱してしまい、正確な測定ができないこと。

・アインシュタインは不確定性原理を、本来決まっている電子の位置を人間の限界により測定できないと考えたが、「相補的解釈」によれば、電子の位置と運動量は、様々な状態が共存しており、どの状態を観測することになるかはきまっていない。つまり、原理的に不確定だという。

・量子論によれば、ミクロの物質は誰も見ていないとき様々な場所に同時に存在している。物質は、通常は「波」として存在し、観測される瞬間に粒子になる。これは、常識的には信じられないものだが、二重スリット実験により明らかになっている。スリット実験は、2002年のフィジクスワールド誌が世界中の科学者にアンケートし、最も美しい実験に選ばれた。スリット実験は、一個の電子が、幽霊のように二つのスリットを通過していることを示している。が、衝突の瞬間には一個の粒子になっている。また、世界中で同じ時刻で一つだけ電子を発射し、それを重ね合わせても、同じ干渉パターンの結果が出る。すなわち、電子がお互い干渉しあっている。また、どちらかのスリットを通っているかを観測すると、電子はどちらか一方のスリットをとおり、干渉パターンも消えた。すなわち、観測によって、波が収縮した。
→すげえ!!量子論の世界、恐すぎ。

・アインシュタインはこのようなミクロの世界の不確実性については、「神はサイコロを振らない」として反対した。

・EPRパラドクスと光速度不変の原理;長くなるので書かないが、非常に面白い実験。光の速度をこえて、互いの電子の情報は伝わらないはずだが。。アインシュタインの思考実験を実際にアラン・アスペという人が行い、量子論の立場から証明。

・エヴェレットというひとによる多世界解釈というSF的な説明が、この不思議な現象を説明するために持ち出された。無数の世界が共存しており、「観測」される度に世界が複数に分岐している。

・クーンは科学革命において合理的な基準は存在しないという。新パラダイムと旧パラダイムの一種の闘争であり、新は、旧の欠陥を挙げてプロパガンダする。科学理論の変革において、決定的な意味を持つのは、「真理」や「客観」ではなく、科学者集団による「信念」や「主観」に基づく「合意」。クーンは新理論が旧理論よりも真理に接近するというポパーの進歩概念を幻想と読んでいる。二つのパラダイムは概念の共通項がなく比較不可能。(共約不可能性)

・ヒュームによれば、帰納法には論理的な根拠はない。地球が太陽の周りを回るという事実は明日もそうだといウ必然性を導かない。


<第三部:知識の限界>←わかりにくい。
・ゲーデルは数学の世界はでは、公理系では汲みつくせない真理が存在することを証明。

・人間の脳がアルゴリズムに従うだけのチューリング・マシン論があるが、ゲーデルはそれを否定。アルゴリズムの限界を証明したことが、人間の優秀さを示していると考えた。

・チャイティンの真理性の話。分かりにくかったけど、面白そう。後でこれを読んでおこう。
http://okwave.jp/qa3552351.html
↑読んでみたけど、ある種のトートロジー。もっと詳しい説明はないのか。
まあ暇なときにでも探してみよう。


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