On the Road

スピリチュアル妄想録
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波乱の時代(下)波乱の時代(下)
(2007/11/13)
アラン グリーンスパン

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下巻も読み終わり。
上巻は自伝で、下巻は経済論一般。

多方面にわたり貴重なご意見を開陳しておられる。最高の実務家による経済概説ではなかろうか。

以下気になったところなど。

<経済成長>
・経済成長に影響を与える重要な要因は以下の3つ。①競争の程度、②国内制度の質、③当局の政策。著者は財産権の保護が経済成長を促す制度の根幹と考える。

・個人に財産権があり、その権利は合法的に移転できるとの見方が社会に根付いていなければ自由市場経済は機能しない。←利益の追求が非道徳的との感覚が残っている社会

・発展途上国では不動産への所得権が認められるだけで、それを担保に資金も借りられるし、発展に寄与する。

・経済成長は幸福度を生み出さない。所得が増えて幸福度が上がるのは、基礎的なニーズが満たされる時点までであり、その後の幸福度は、他の人と比べてどうかという相対的なものに。
→そう思う。

<資本主義の形態>
・どのような経済体制・労働市場(解雇や転職の多さ)をとるかは、物質的な豊かさとストレスのなさの間でどのようにバランスをとるかの選択であり、その社会の歴史と、社会が育んできた文化すなわち共通の価値観に左右される。米国はより自由な労働市場による物質的な豊かさを求め、欧州や日本は後者により重点。そのように一国の文化のいくつかの側面はその国のGDPに影響を与える。

・ビジネスに肯定的な社会の方が企業に遙かに競争の自由を与え、物資的な豊かさの面では有利になるが、競争はストレスを生み、富の蓄積に人々は複雑な感情を持つ。

・米国のCNOOCによるユノカル買収騒動(05年6月)により、米国は貴重な資産を失った。非差別的で公正な取引を行っているとの評判を失い、対内投資に悪影響。

・日本の回復を押さえていたのは文化的な見えざる手。宮沢首相が著者に述べたように、日本人は経済的に合理的な処方政を認識していたにもかかわらず、多くの企業や個人の体面が傷つくのを避けるため、敢えて巨額のコストがかかる経済停滞を受け入れた。これは日本文化によるものでアメリカではこのような経済政策は採られない。

・同じ集団意識が日本を救う可能性有り。ある日本の高官が述べたように、年金給付水準は下げられても問題にはならない。日本人は制度の変更を国益の中で考える。米国の議会や有権者はそこまで合理的に振る舞えない。

<経常収支と債務>
・財政赤字に比べ経常赤字の懸念度は相当低い。

・米国の経常赤字を生み出す要因として大きなものは、財政赤字でも不公平な為替による輸入の多さでもなく、最強の通貨としてのドルの地位に伴うアメリカへの投資の大きさである。さらには「ホームバイアス」の大幅な低下と生産性の伸びの大幅な加速にある。

・外国人のドル資産への選好が低下すれば、ドルに対する需要は減少し、為替はドル安になり、輸出が増え、経常赤字は減少する

・現時点で米国の対外直接投資の利回りは11%で、米国の対外債務の金利を大幅に上回っている。→竹森俊平の「世界を変えた金融危機」でも指摘されている。

・情報技術やインフラを含めた金融の発達により、家計や企業はより債務を負うことができるようになってきた。南北戦争直後の銀行家は資産の40%を自己資本で裏付ける必要があると感じていたが、今は10%でよい。

・債務が国内債権者からのものか国外債権者からのものかはそんなに重要でない。

<グローバリゼーションと規制>
・異常な市場スプレッド(市場の非効率性)のかなりの部分を解消する上でヘッジファンドはポジティブな役割を果たしている。

<世界的なディスインフレ現象>
・冷戦終結とグローバル化により、単価の安い労働力が先進国に流入することで、賃金が下がり、インフレ率が下がり、金利が下がり、経済成長の現象に大いに寄与した。
→まあでもそろそろ世界的にインフレが大問題になりそうだよな。

<長期的なエネルギーの逼迫>
・投資家による先物投資などによる投機的資金の流入による原油高は肯定されるべき。それによって、速いペースで石油価格が上昇し、在庫が積みあがり、需給のバッファーになっている。これによってひいては長期的なカカク圧力を弱める。価格が上昇していなければ石油の消費量はもっと増え、需給はより早く逼迫していたであろう。→投機マネーは価格高の悪役として指摘されることが多いが、面白い見方。

・供給量の減少は産油能力の伸び率が20年間0.8%、精製能力は0.9%しか伸びなかったこと。一方で、消費量と確認埋蔵量は1.6%で伸びた。国有石油会社は価格下落を恐れあえて投資をしていない。民間の石油会社は投資したいと思っているが資源ナショナリズムなどで、自由には開発が出来ない。

・原油価格には「テロリスト」リスクプレミアムが相当乗っており、中東和平が達成されれば間違いなく原油価格は大幅に下落する。
→和平プロセスは昨秋ブッシュが新たなイニシアティブを打ち出し今年中の解決を打ち出したが、今のところほとんど進展なし。今後も難しいと見るのが妥当だろう。ただし、ガザにハマスを追い出したパレスチナのファタハ陣営を大事にしようという機運は欧米にあり、ブレイクスルーは今後の情勢次第で無きにしも非ずであろう。

・原子力は利用が大幅に不足している。

・二酸化炭素のキャップアンドトレードは反対。排出総量をどのくらいの上限とするかによって、値段も変わるから。

・バイオ燃料に関し、25キロのとうもろこしから出来るエタノールはわずか、3.8L

・イラク戦争はおおむね石油をめぐるものという誰もが知っている常識を政治的に認めるのが不都合であることを悲しく思う

<未来を占う>
・経済成長にとって一番重要なのは財産権保護などの法の支配。人間がどこまでリスクを取ろうとするかは、ルールが決まっていないと分からない。不確実性を低下させるためにルールが必要。
→竹森前掲書と似たような論理で興味深い。ルールがしっかりしていないと、ナイトの不確実性が増すということ。

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